設計のネライvol.1
- リュック自体の質量より背負ったときに感じる重さが大事

HOLICCは、旅して働くという自由で新しい生き方を広めるべく、2020年に誕生しました。
広く浅く万人が使えるモノではなく、不満に共感する人に刺さるモノを作りたいという思いから、「あったらいいな」を形にした商品を開発しています。
そこで、HOLICCのアイテムは何を解決するためにどこにこだわったのか、どんなシーンでどんな風に活用できるのか等を、チーフプロデューサーである齊藤が不定期連載”設計のネライ”として皆さんにお伝えしていきたいと思います。
今回は『One』の数あるこだわりの中から「重さ」について紹介していきます。
リュックを背負ったときに感じる「重さ」とは
ビジネスリュックを購入する際、気になることの1つに「重さ」があると思います。
お店で買う場合は実際に背負って比較することができますが、ECサイトで購入する際はそれができません。そのため、商品ページに書かれている質量で比較してしまいがちです。
しかし、リュック・バックパックは背負っている時間が長いものなので、背負ったときに感じる重さ、正確には荷物を入れたときに感じる重さが最も重要な要素ではないでしょうか。
背負うと軽く感じる『One』の秘密
HOLICCの『One』はリュックの構造に注目し、以下のように開発しました。
登山家にはよく知られていることですが、重いものをリュック上部や背中に近い部分にパッキングしたほうが軽く感じます。これは、支点となる肩や背中からの距離が近いところに重いものを入れたほうが揺れが少なくなるからです。
そこで、上下にスペースを分ける構造にしました。上下が分かれていないと、荷物は下から積み上げるしかなくなりますが、上下を分けることで上部スペースを有効活用することができるようになりました。モバイルバッテリーなど重いガジェット系を上部に入れてもらえると嬉しいです。
次に、ショルダーハーネスの幅や素材についてです。
幅が広い方が肩にかかる圧力が分散するため、軽く感じます。Oneでは8cmという広めの幅にすることでこれを実現しています。また、中の素材も大事で、反発性が低いものを選び、厚みを出すことで負荷を分散させています。
胸の前でバックルを留めることができるチェストストラップもショルダーハーネスのズレを防いで負荷を軽減させるものです。Oneにも位置を調節できる仕様で搭載しています。こちらは好みやシーンによって必要でない場合もあるため、取り外しができるようになっています。
型崩れしにくい堅牢性も、軽く感じることに寄与しています。
形が崩れる=重力で下にもたれることになり、支点からの距離が生まれることに繋がります。
その結果、デザイン時に想定していた形ではなくなるため、想定外の箇所に負荷がかかってしまう可能性が高まるのです。
モノ自体の質量よりも、トータルの身軽さを重要視する
気付いていただきたいのは、「軽く感じるための仕様は、どれも質量自体は増えるもの」ということです。
上下構造やショルダーハーネスの幅を広くすると生地が当然増えますし、ハーネスのクッション性や型くずれしにくさも、中に入れる素材が増えることになります。チェスターストラップの重さも増えます。
かばん自体の質量を軽くすることは簡単なのですが、結局「背負ったときに感じる重さ」を重要視し、質量を多少犠牲にしてでも快適性をあげられるように考えています。
商品タグや商品ページに書いてある質量はとても分かりやすく比較しやすい指標です。
『One』よりも質量が軽い商品はたくさんあると思いますが、私たちは感じる重さや、さらに言えば別のバッグを持たずに済む洋服圧縮機能を含め、トータルで身軽に過ごせることを目指して商品を作っています。
この考え方が伝わって、共感いただけたらとても嬉しいですね。
プロフィール
齊藤 英之
HOLICCチーフプロデューサー
大学卒業以来従事してきたマーケティングの経験をベースに、ニーズより深い「ペイン」を見つけ、それを解決できるようにプロダクトへ落とし込む作業を得意とする。
そのアイテムを自らの旅で使い、旅人目線での改善を行ったものを発表。現時点でHOLICCの全アイテムのデザインを手掛ける。開発コンセプトは「ずっと使いたくて、ずっと使えるもの」。
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